「グリフターズ(The Grifters)」
Regencyより1963年に出版される。57歳。
さてさて、「グリフターズ」である。グリフターとは詐欺師・ペテン師の事。
本書は1990年に映画化され、邦題「グリフターズ 詐欺師たち」の名で日本公開もされた。製作にはマーティン・スコセッシが、脚本にはなんとドナルド・E・ウェストレイクが当たっている。またロイをジョン・キューザック、その母リリィはアンジェリカ・ヒューストンが演っている。
観てないけど原作をほぼ踏襲したなかなか渋い仕上がりになっている模様である。余談だが、家族で「アダムス・ファミリー」が大好きな我が家ではアンジェリカ・ヒューストン=モーティシアで大好きな方なんだけど、彼女はかなり沢山映画に出ているけど、「アダムス・ファミリー」以外には縁がなかったな〜。
そんな彼女ってジョン・ヒューストンの娘だったとは知らなんだ。
また、彼女の弟にあたるダニー・ヒューストンはジョン・ル・カレの「ナイロビの蜂」を監督をやってたりするんだね〜。すごい映画一家だったのだ。ジョン・ヒューストンが父で娘がアンジェリカ・ヒューストンか〜。しかし、すげ〜家族だな。ほんと。おっとっと脱線、脱線。
レジでのお釣りのやり取りで店員を煙に巻き小銭を巻き上げる事で生計を立てている男ロイ・ディロンはカモろうとした店の店員に気付かれモップの柄でひどく腹を殴られてしまう。
ロイ・ディロンは僻地の貧乏な白人一家の娘であったリリィが14歳の時に生んだ子供であった。父親は30歳になる鉄道労働者で、ロイが生まれて一ヶ月足らずで父親は職場の事故に逢って他界。リリィは夫の遺族年金によって突如喰うに困らない程度の金を手にした幼い未亡人となったのであった。
リリィが得たなけなしの金を目当てにする故郷を離れてロイを女手一つで育てたのだが、貧しすぎた育ちと、余にも幼い母親。リリィの歪んだ価値観によってロイも屈折した性格を持つ若者に育ったのであった。
ロイには付き合いだして4年になる愛人のモイラがいる。かなり悪い体調を欺くかのようにモイラを定宿に呼び出し愛し合うロイ。
彼女が帰ると入れ替わりで現れたのは母親のリリィであった。突然現れたリリィとは顔を合わせるのは7年ぶりである。
ロイは25歳、リリィは39歳になるのだが見た目が若いリリィと親子であるとは傍目では誰も信じないだろう。
彼女は大掛かりな私設馬券屋の下で、特定の馬の馬券を大量に購入する事で配当率を操作する担当をしているのだった。
表向きは委託販売セールスをやっているロイだが、リリィは裏で詐欺行為を働いている事を目ざとく指摘するばかりかロイの体調が著しく悪い事に気付いて医者を呼び出すのだった。
ロイ・ディロン・・・・・・・・・・・詐欺師、セールスマン
モイラ・ラングトリ・・・・・・・・・ロイの愛人
リリィ・ディロン・・・・・・・・・・ロイの母親、私設馬券屋に携わる
ボボ・ジャスタス・・・・・・・・・・リリィの組織のボス
キャロル・ローバーグ・・・・・・・・看護婦
パーク・ギャグス・・・・・・・・・・販売会社の男
シムズ・・・・・・・・・・・・・・・ホテルの経営者
本書は珍しく一人称で語られない。時期的にはハリウッドへ移住後であり西部劇等の脚本などにも手を出していた頃である。確かに物語の展開は内証的な面が省かれ映画的、映像向きに仕上がっている。
物語は、ロイは胃に大規模な出血を起こしており放っておけば数日で死に至る状態であった事から入院。彼の扱いを巡ってことごとく対立するモイラとリリィ。モイラを毛嫌いするリリィはロイの付き添いとして看護婦に無垢な女性キャロルをあてがいロイの気持を引き離そうと計る事で結末に向けて動き出していく。
タイトルは「詐欺師たち」となってるが、映画の「スティング」のように結託して詐欺を行う訳ではない。お互いに相手を出し抜くために騙そうとしている。相手が本当の事を言っていないだろうと推測しあっている所にこの物語のキモがあるのだ。
そしてその疑念が暴走を生んでいくのである。そしてその幕切れの投げ出し方の粗暴さ加減、その救いのなさはトンプスンの得意とする所だ。正に重い砂袋を放り出したようにドサッと投げ込んでくるのだ。それも読み手の胃の辺りに向かって。
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