2005/07/09:「鬼警部アイアンサイド(Ironside)
Popular Libraryより1967年に出版される。61歳。
本書はNBCテレビで製作放送された「鬼警部アイアンサイド」のノヴェライズ。
アメリカでは「鬼警部アイアンサイド」は198話、1967年9月14日〜1975年1月16日の8年間に渡り放送された人気番組。
日本では1969年4月1日〜1975年9月23日で全話が放送された。1993年には「帰ってきた鬼警部アイアンサイド」が製作され、日本でも放送された。
主演のレイモンド・バー(Raymond Burr)が狙撃され半身不随となりながら不屈の精神で犯罪に立ち向かう鬼警部ことロバート・T・アイアンサイド警部の物語。主な現場実見は部下が行い、アイアンサイドは住居を兼ねた捜査本部で推理をする半ベット・ディテクティブもの。この「半」というのが実は肝の部分でしたね。
捜査本部から自由に動けないアイアンサイドの閃きが遅くて、部下が窮地に陥ったり、アイアンサイド本人が街に出て、そのハンデゆえに窮地に陥ったりするところがまたハラハラ・ヤキモキさせられる番組だった。
クインシー・ジョーンズの曲に乗って始まるオープニングタイトルで登場するライフル銃のアップは今でも思い出せる。
オープニングで背景説明をコンパクトに纏めて紹介する手法を使ったアメリカのTV番組って、いろいろありましたね。好きで随分観てました。という事でつらつら考えていたら、おぉ!!いろいろ思い出してきた〜!!
・SF系
「巨人の惑星」
「タイム・トンネル」
「宇宙家族ロビンソン」
「600百万ドルの男」
「X−ファイル」
・刑事・探偵もの
「スタスキー&ハッチ」
「刑事コジャック」
「刑事コロンボ」
「ロックフォードの事件メモ」
「警部マクロード」
「特別狙撃隊S.W.A.T」
・そのアクションもの
「逃亡者」
「コンバット」
「スパイ大作戦」
「0011ナポレオン・ソロ」
「バットマン」
「グリーン・ホーネット」
・コメディ
「その抜け億万長者」
「奥様は魔女」
懐かしいな〜。随分と面白い番組が一杯あったな。
おっとと脱線だ。
本書に話を戻すと、テレビ番組の初期の登場人物と設定をベースに番組のエピソードとは全く独立した物語をジム・トンプスンが書き下ろしたものだ。でも何故、彼がこれを書く事になったのか事情はわからない。
彼の作品では大抵、主人公が悪人だが、今回は障害を持ちながらも並外れた正義感に燃える警察官が主人公。また本来の一人称での語り口も本書では使われておらず、なにもかも他の作品と一線を隔した異色な作品に仕上がっている。
ロバート・アイアンサイド・・・・・サンフランシスコ市警察特別顧問
エド・ブラウン・・・・・・・・・・同部長刑事。アイアンサイドの助手
イブ・フィットフィールド・・・・・同女性警官。アイアンサイドの助手
マーク・サンガー・・・・・・・・・アイアンサイドの助手。
エレノア・マクニスミス・シチョルムはスラムに屯しいかがわしい商売に手を染める女だった。彼女は顔を隠して出た映画をネタに見知らぬ男に強請られる。しかしその男の目的は単に金ではなかった。男の名は「処刑人」。そうと知らずにエレノア・マクニスミス・シチョルムはその男に会いに行く。
アイアンサイドが外出から自宅兼捜査本部へ戻ると、何か助手達の様子が変だ。実は助手達はアイアンサイドの誕生パーティを密かに企画していたのだ。気付いた時にはもう断る事が出来ない様にする為だ。渋々パーティに加わるアイアンサイド。久々に優しい一時を過ごす捜査本部の面々。普段は厳しい事ばかり並べるアイアンサイドだが、助手達に対して家族同様の愛情を持っているのだった。
パーティもそろそろお開きという所へ地方検事のウェイン・ビリングトンとコールマン・デュークが訪れる。コールマン・デュークは運送業界の大立者で金に物を言わせるタイプの男だ。彼がわざわざ出向いてくるにはそれなりに理由があった。それは出来の悪い一人息子ベイブが起こした交通事故の後始末の為だった。
飛び出してきた女を轢き、恐くなったベイブは現場から逃走して来てしまったというのだ。犠牲者の女は死亡。その女の名はエレノア・マクニスミス・シチョルム。息子を自首させるから、準備が整うまでの間、捜査を遅らせて欲しいというのだ。この要求を厳しく撥ね退けるアイアンサイド。
アイアンサイドに見出され貧困生活から抜け出し弁護士になる夢を持つことができたマーク・サンガーは誕生パーティーから夜間学校へ向かう途上で道端に止められた車から呼び止められる。車の男は黒人蔑視も咋に喧嘩を売ってきてた。相手せずに行き過ぎようとするマーク・サンガーだが、彼らは執拗に絡んできて、とうとう殴りかかってきた。やむを得ず防戦に出るマーク・サンガー。これが思わぬ死傷事件に発展してしまう。
一夜明けて事件を知ったアイアンサイドは正義感と愛情の板挟みに苦しむ。そして事件は更に思わぬ展開を見せ始める。
本来の海外ミステリの韻を踏みいるので読んでいて全く違和感はない。寧ろ安心してサスペンスに没頭できる感じだ。テンポ良く進む物語は正にテレビドラマの様で、場面が目に浮かびやすい。エレベーター前で展開するシークェンスではCMが割り込む間まで用意されているようで、本人が楽しんで書いているのが伝わってくる様でこちらも読んでいてとても楽しい。
ジム・トンプスンの本来持ち合わせている理性的、論理的な性格。そして世の中をやや斜めに観ている所がまっすぐ表現されているような気がする。その意味で、このアイアンサイドのキャラクターはトンプスン向きだったと言えるだろう。この設定で幾つも本が書けたのではないだろうか。
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